素敵な大人になりたいなら、レンジローバーに乗ればいい



彼がレンジローバーに乗り始めたのは17年前の36歳。選んだ理由は今の彼からは到底想像出来ない理由だった。 「ちょうど監査法人をやめてIT業界で独立した頃だったかな。今よりずっと格好つけて気取っててね。それまでメルセデスのSL乗ってて、家族ができたから次はゲレンデかレンジローバーか、という高級車志向というか、見栄でクルマを選んだんだよ。でも3年位してレンジが体に馴染んできて頃には、不思議といい格好したいとか俗っぽい気持ちがだんだんなくなってきたんだよね。ものの良さを見る軸が自分なりに出来上がってきたんだろう。今ではレンジローバーも含めて、ブランドがどうとか、値段がどうとか、まったく気にしなくなったんだよ。



便利なものはカッコいい、でも便利なものが、心地よいとは限らない。そう、便利なものはどこか気持よくなかったりするのだ。素敵な大人になりたいなら、知っておきたいモノ選びのポイントかもしれない。 「40歳を過ぎた頃、革製品とか万年筆とか、手入れが必要なものを選ぶようになってたかな。手がかからないモノとか便利なものは信用出来ない、命というか、息吹のようなものを感じることができない。中学校で使い始めたシャープペンシルから鉛筆に戻っていくし、それも一番書き心地の良い三菱を選んだり、紙は結局RHODIA、ペン先を通じて触れるもの。もちろんクルマはレンジローバーだな。そして、すべてにいい加齢臭が出てくるんだよ。」



ものに溢れた現代世界。便利なもの、格好いいもの、ファッション、技術革新、人類の消費サイクルはどんどん加速してきた。でもやっぱり本質は消えない。アイデンティティは消える事はない。 「結局僕は職人と会うのが好きなんですよ。実際に会うのもそうだし、ものを通じて出会った気になるのね。自分の万年筆を自由が丘のモンブランのマイスターの店に行って自分の書き癖に合わせて研いでもらったり。2台目のレンジローバーは中古で買ったんだけど仕上がるまでの整備の過程を見に行ったり。共通するのは、人に向き合ってるんではなくものと向き合ってるんだよね、職人は。人から聞いた話だけど、ある天ぷら屋の主人は、『美味しいですね』って言ったら、無愛想に目も合わせないで『そのように作っておりますので』っていうらしい。是非行ってみたいですね。」



手のかからないものって命が宿っていないって思うんですよ。
革製品でも万年筆でもクルマでも
メンテナンスが必要なものじゃなきゃ、なんか信頼できない。
手がかからなかったら、愛着なんか湧かない
壊れないものは信頼出来ない

公認会計士 会社役員