スーツの話をしましょう。
他人が着ているスーツのブランドを言い当てることができる人はそれなりにお洒落に対するアンテナが高い人なのでしょう。でも、専門家でなければ、フルカスタムメイドのスーツを見分けることはできません。 でも、どんなに洋服のブランドに無頓着な人でも、自分のためだけに作られたフルカスタムメイドのスーツなら、目を閉じていても上着を羽織るだけで、これは自分の服だと言い当てることができるものなのです。そのスーツは自分がすべてを判断し、自分のためだけに、熟練した職人が丁寧に作り上げたものだからなのです。本人だけが知っている愛すべき着心地と感触。そしてそのスーツと歩んできた自分だけの歴史があるからなのです。
テーラーはいわゆる洋服の仕立屋さん。テーラーメイドは本来、フルカスタムで仕立てられた洋服のことを言うのですが、現在では「大量生産でない」の意味に使われることが多くなりました。型紙や装飾など数パターンの組み合わせによりオリジナルな洋服を作っていく、いわゆる「イージーオーダー」なるものが登場するようになりました。これと区別するために本来のフルカスタムメイドの仕立屋さんのことを「ビスポーク・テーラー」と呼ぶようになりました。
「ビスポーク」の語源はBe Spoken(言われる)だそうです。顧客に「言われた通り」にテーラーが自分の感性の許容範囲でスーツを仕立てていく。
そうして出来上がったスーツは上質で袖を通しただけで、目を閉じていても自分だけのスーツだとわかるものに仕上がります。自分だけが知っている着心地。それを身にまとったビジネスの成功も失敗も、出会った人とのつながりもすべてが豊かなものになることでしょう。男が一生付き合うことのできる良き相棒となっていくのです。
目隠しをして、運転席に座りステアリングを握る。身体を包み込むレザーシートの感触、ステアリングウッドの手触り・・・それだけで自分の一生の相棒だと感じることが出来る車は素敵だと思いませんか?
レンジローバーは本来そういう車なのです。
あまり広くは知られていませんが、レンジローバーは本来、完全なビスポークプランで制作される車なのです。
カーペットの色、アームレストの色、皮革の材質、ウッドの材質、ボディーカラー・・・・などなどすべてをユーザーが自分の好みで選択し、自分のためだけの1台を作ってもらうという、他の車では考えられないオーダー方法なのです。それはまさに、ビスポーク・テーラーで時間をかけてスーツを仕立てるのと同じ。ランドロ―バーの営業マンが自宅まで来てくれて、紅茶を飲みながら長い時間をゆっくりとかけて自分だけの車の仕様を決めていく・・・・本来のビスポーク・テーラーメイドの車なのです。