素敵な大人になりたいなら、レンジローバーに乗ればいい




2年ぐらい前に、パーツの取引先の社長がイギリスからうちの工場に来たんですよ。たまたまエンジン腰上をバラバラにした2ndが3台あって、「君の工場ぐらいだよ、シリンダヘッドのボルトをたくさん注文してくるのは!」と言われました。去年の今頃ロンドンに行っていろんなレンジを見てきたのですが、根本的に違うんですよね。建物ひとつとっても、建てなおさず築300年のマンションもザラです。モノの愛し方に大きな違いがあるなあと感じました。




2ndレンジローバーを思う気持ちって、ダメな男と別れられない女の気持ちと少し似てるよね。「暴力ふるうし酒癖も悪いけど、時々世界一やさしいんです」みたいな。乗り心地にしても、まともに動いている時の価値がすごく高いから乗り続けられる。でも、3ヶ月何も壊れないとだんだん不安になってくるかも。大きな故障が次に潜伏してるんじゃないか?とか(笑)国産車だと、どこか故障すると「この車は外れ!」とか始まって、乗り換えを検討し始める傾向も強い。あらゆる意味で、顧客上位な国だと思います日本は。
  




故障の話は尽きないけど、例えば僕はエアサスを1本ずつ換えてきたよ。左右同時に壊れることはないし、逆に同じ所がまた壊れることもあるしね。ついでに捨てられるパーツも可愛そうだし(笑)まだ生きられるのに?みたいな声も聞こえてくるのよ。同時に換えられたら巻き添え食ってるようなものだよ。例え出先で故障して止まってしまっても「まあ、いいっか」と考えたい。絶対っていう事に関して、車に求めちゃいけないと思う。最新の国産車でも突然止まる時はある。レッカーで運ばれたのは、僕の場合は11年間で3回ぐらいかな。また2ndレンジの場合は、相談できる仲間が多いっていうのも、乗りつづけられる理由でもあるね。
  




UKには仕事で出張に行ったり、彼らが日本に来たりと交流があるのですが、車に対する考え方が全然日本と違うなあと思うことがありましたよ。UKでは贅沢税のかからなくなった中古車を探して「治して乗る」という文化があるようです。例えば、クルマの床に穴が開いたら無税になると聞いたことがあります。自分で治せば愛着が出てずっと乗り続けたくなるし、税金はずっと安いまま。彼らは古いものを自分で治して「いい車だろ?」って人に言いたいのかな。イギリスのクルマ好きの気質ってそんな所にあると思う。
  




イギリスのお国柄なのでしょうが、本当は日本人が一番大切にしてきた言葉だと思うのですが、『温故知新』という言葉の意味を深く理解できていると思います。イギリス人は古いものを大切にして復元し、また新しいものを作るにしても、その物の歴史や過程が感じ取れるものが多いと思います。レンジで帰宅して、エンジンを切る前のわずかの時間、トラディショナルな運転席の革シートの何とも表現できない感触。そこに全てがある気がするのです。
 

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